半農陽さんの畑通信

この春から商業広告文を書くコピーライターの看板をはずして、名刺の肩書きを「ライター&半農陽さん」に改めました。残りの人生いちばんしたいことって何だろう?と考えた結論が、半分は自給自足をすることだったのです。食べたものが自分になる(脳細胞も含めて)のは間違いのないことですから、自分と家族の元気の素は自給自足しようというわけです。体を動かすことで元気そのものも鍛えられるわけですし。因みにあと半分は半農を土台にライター人生の後半にとってあったテーマにチャレンジします。

生ニンジン丸かじりのウオーカーさんが教えてくれた〝別物〟。

三輪座の店頭で野菜の販売を始めて、丸8ヶ月経ちました。我が家のババさま丹精の野菜たちは、原則無農薬・朝採り。売れ残ってまだ元気のよい野菜は翌日値下げしてサービス品になりますが、「値下げ品より朝採りの鮮度のいい方から売れて行くものなんだ。」と知ったのでした。

野菜を鮮度でお買い求めになるいい例が、買ったニンジンをそのまま丸かじりされた方が二人もいらっしゃったことです。一人は外国人男性。日本人の女性とペアで山の辺の道を歩きに来られたとのこと。彼女と話している間に少し居なくなったと思ったら、手洗いでニンジンを洗ってかじりながら戻ってくるではありませんか。

陽といえば、周囲の親しい人たちの間では「ニンジン嫌い」で通っていて、今でも「子どもみたい」とよく冷やかされています。なんとなく青臭く、味も特異と感じて苦手だったのです。でも彼が目の前でポリポリと美味しそうにニンジンを食べていると決して悪い気はしません。もしかすると「美味しいのかもね?」の気持ちが少し芽生えたのでした。

それからしばらく経った小春日和のある日、今度は若い女性の山の辺の道ウオーカーの方が、「今朝は寒かったよね。凍てつく地面から掘り起こしたニンジンって、ほんと魅力的だわ。かじりながら歩くから洗ってもらっていい?」って。おやすい御用とばかり水をちょろちょろ出しながら、ナイロンタワシで軽くこすっているときでした。フッと感じた香り、それは今までのニンジンとは別物に思えました。

母なる匂いとでもいいましょうか。どうしてこんないい香りがするの?と思って調べてみると「雪下ニンジン」の情報に出くわしました。晩秋に実ったニンジンを収穫せずに雪に埋もれさせておくという栽培法があるとか。雪下ニンジンは木のような芳香を発散するカリオフィレンが普通のニンジンの12.6倍もあるとか。凍てつく地面の下のニンジンも多少それに準ずるのやも知れません。

意を決して陽もその日のニンジンをかじってみたのです。味も香りも別物でした。香りがよい上に甘い。甘さというのも調べたところでは、凍てつく土でストレスを感じたニンジンは防御反応としてアミノ酸などが増え、人はそれを甘いと感じるらしいのです。雪下ニンジンの場合アミノ酸も数倍になるといいます。寒い季節の野菜、霜が降りると甘く軟らかくなるのはこの理屈によるようです。

京野菜はすっかりブランドになったけれど、昼夜の寒暖の差が大きい盆地特有の気候は奈良盆地も負けてはいない。寒い日が続くようになって、大和野菜もブランドになるよう頑張って販売し続ける価値は十分あるような気がしてきています。

(左)ほりたてニンジン (右)ほりたてを洗いたてニンジン
-2010・2・12- 「あきない毎日」のホームへ