寅さん記念館にありました。寅さんは実家に戻ってくるとしばらくは二階に逗留して、またふらりと出かけてしまうのがいつものこと。「…姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。…たった一人の妹のために、粉骨砕身、バイ(商売)に励もうと思っております。…以後見苦しき面体、お見知りおかれまして…」こんな大義名分で。
寅さんの商売である大道商人の啖呵売というのは、昭和の初期「大学は出たけれど」仕事につけない若者があふれかえった頃に編み出されたといわれます。内定取り消しが横行し、派遣社員も契約を打ち切られるなど未曾有の大失業時代が再来している昨今です。インターネットショッピング分野に活路を求める人のネット上の大道商人がしのぎを削る時代が訪れるかもしれません。
寅さん装束と持ち物、これだけでどこへでも出かけられて、商売もできるって、これは、考えようによってはすごいことです。あとは口上がすべて。そこで思い出したのがジャパネットたかたのテレビショッピング。お客さんの関心をぎゅっとつかんで離さないという意味では、電波上の大道商人として通じるものを感じます。
ジャパネットたかたの高田明社長は自社内のテレビスタジオからの生放送。場所こそ違え、その商品をどう使えば生活が豊かになるかのトークの後、カメラが商品をクローズアップしていく速さのちょっとした違いなどにも毎度試行錯誤されているとか。口上と魅せ方、ノせ方の工夫で売れ行きが全然違うあたり、雰囲気は違うけれど商いの心は大道芸とほんとよく似ています。
奈良へ帰る新幹線、寅さんの顔と高田社長の顔がオーバーラップしていました。「いつか大きなテレビを買おう。家族みんなでリビングに集まって、楽しみにしていた番組を見よう。そんな『いつか』を、ジャパネットが『今』、ご提案します。」(ジャパネットたかたのHP、CMギャラリーに動画あり)テレビの画面から呼びかける高田社長の若々しい笑顔と甲高い声。思わず「おたくに任せるから大きなテレビ届けてちょうだい」みたいな気分になります。
こちらは寅さん。「さて、ここに取りい出しましたこのバッグ、カドは一流デパートでお願いしますと、三千円から四千円、下らない品物です。神田は六法堂という有名な老舗が、今回のバブル崩壊で泣きの涙で投げ出した品物です。さぁ、お手に取って見てやって下さい。はい、これ手に取って見てやってね。ね、でも、なんといってもいいのはコレよ。ね、お値段見てやって!」(第45話・1992年-H4-12月)
次回は寅さん記念館の柴又葛飾のミニチュアセットで、昭和の言の葉風景を垣間見ることにします。



