明日香な時間で米づくり

明日香村棚田オーナーになったきっかけは…

今年も巨大な藁のオチンチンが村の入り口にぶら下がったの巻

明日香の稲渕大字では、もう何百年も、あるいは千年もの昔から、正月には村の入り口に注連縄を張り巡らし、一年の息災を祈る行事が続いているそうな。それもなあ、ただの注連縄ではねえ。男綱いうてな、十歳の子供の背丈ほどもある、巨大なオチンチンを藁でこさえて、ぶっとい綱を編んでぶら下げるもんだから、飛鳥川を遡ってくる疫病神も恐れをなして、この村の入り口には、近づかんのじゃそうな。男綱というからには、女綱もあるわな。これも女の徴をかたどった藁細工が、飛鳥川の上流側の別の入り口にぶっとい綱でぶら下げてある。男も女も力を合わせてふんばって、疫病に付け入る隙を与えんようにしている訳や。

ふーん。もしせんかったらどないなるんやろ。
それがな。百年ほど前のことやけど、いっぺんだけ、こんなしんどいこと止めよいうて、男綱も女綱も張らんかったことがある。そうしたらな、村に死人が出るわ出るわ、その年一年の間に、村人が五十人も死んだそうや。それからは、くわばらくわばらいうて、毎年正月には新しい綱に掛け替える綱掛け神事がもう欠かされたことがないんや。

親から子へ、孫へ、このように語り伝えられているであろう勧請綱掛け神事を今年初めて見学することができた。昨年一年棚田へ通う度に、その下をくぐった勧請綱は、このようなわけで、ずっと更新されてきた村の伝統文化なのである。

なぜ、男根であり、女陰なのか。たぶん子孫繁栄祈願という意味合いがあるのだろう。それにしても、大らかな雰囲気がよい。聖徳太子ゆかりの地ではあるが、こういうものは仏教文化以前の山や大地の神々への信仰に源を発するのではないだろうか。男根も女陰も不思議な力をもつものとして崇められた。そういう大らかさが今も息づいているというのが、実にいいと思うのである。

棚田の仲間のM夫人は、この日男綱女綱を編み込んだオリジナルセーターを着てのお出ましだ。連れ合いのM氏は棚田通いの準村民を代表して神事の玉串を捧げた。いつの間にやら神事の法被を着せてもらい、帯代わりに自分で編んだらしい縄を巻き付け、何十年も前からの農民みたいな顔をしているのも、いとおかしという風情。本来よそ者である我々が、このように受け入れられていることと、男根や女陰を奉るこの神事の大らかさは切っても切れない関係にあるように思われるのである。

明日香には、亀石やら酒船石といった聖徳太子以前の得体の知れない遺跡も多い。弥生時代の日本ってどんなだったのだろう。そのころも明日香は、きっととても大らかな村だったのではないだろうか。ゆえに、いろんなものを受け入れてきた。そして、我々が知る限りでは、日本で最初の都がここにできた。そういう伝統が今も息づき、新しいルネッサンスが根付こうとしている。都会からの通い村民が米作りを教わりに棚田へ来ている。それにたいして村の人たちは、千数百年前の渡来民に対するのと何も変わらない処遇で接してくれているのではないか。米から醸した心づくしの甘酒をよばれながら、なんだかそんな気がしてくる綱掛け神事であった。(1998.1 by 陽)

 飛鳥坐神社宮司さんが司る神事 藁で編んだ巨大なオチンチン オーナーも村人と一緒に綱を掛ける 男根パワーで飛鳥川からの魔物の進入を防ぐ
'97-4月 蓮華祭り<今年はスタッフとして参加の巻>
'97-4月 明日香の棚田で農民ごっこ<美味しいお米、食べてますかの巻>
'97-5月 種蒔き・荒田起こし<いよいよ米づくり第一歩を踏み出すときがきたの巻>
'97-5月 田植え前の草刈り<リゾート系に走りがちな都会人の農作業ファッションの巻>
'97-6月 畦塗り・代掻き<どろんこ三昧の一日の巻>
'97-6月 田植え・さなぶり<苗を欲張らずに植えた結果が楽しみの巻>
'97-6月 蛍の夕べ<蛍の潤いを残す意味の巻>
'97-7月 草刈り<初めて草刈り機を使うの巻>
'97-8月 案山子立て<生まれて初めて作った案山子の非エコ系を少々反省の巻>
'97-8月 夏休み企画<初めて欠席の巻>
'97-9月 一斉草刈り<かかしの足元でノックダウンの巻>
'97-9月 タケカワユキヒデコンサート<雨の中バイクでコンサート行き決行の巻>
'97-9月 村民体育祭<国際色豊かな明日香村村民体育祭に参加の巻>
'97-9月 彼岸花祭り<彼岸花祭り延期の巻>
'97-9月 彼岸花祭り本番<彼岸花祭りの放映テレビにわが案山子がチラッと映るの巻>
'97-10月 レンゲの種蒔き<雉に見送られながら早々に帰るの巻>
'97-10月 稲刈り<傍目にはのろのろと稲を刈るの巻>
'97-11月 脱穀・籾擦り<玄米さん90キロ、お乗り~の巻>
'97-11月 収穫祭<明日香の棚田で明日香鍋をつつくの巻>
'97-12月 忘年会<忘れたくない一年の、忘れられない”防”忘年会の巻>
'98-1月 勧請綱張替え神事<今年も巨大な藁のオチンチンが村の入り口にぶら下がったの巻>

-2008・12・11-

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