飛鳥駅~万葉文化館を歩いて、一番最初に訪れたのが飛鳥駅前の「明日香夢販売所」。ここの売り場には地元産の野菜や加工食品がてんこ盛りだった。一般のスーパーなどと違うのは、地産地消のためにある市場であって、色とりどりの外国産の野菜類がが置いてないことだ。今回はこのことについて思うことを書いてみたい。
一般スーパーの売り場では、外国産の野菜や食品がおよそ6割強を占めるらしい。つまり、日本の食糧自給率は4割を切ったといわれている。そのことをもってどうのこうのいっても、直ちにどうなるものでもない。わが国の世界一の長寿を支えているのは、世界にネットワークされた農水産物の広域流通システムのおかげでもあるだろう。しかしそこにはいくつかの問題も潜んでいると思う。
そのひとつは、零細企業である日本の農業がほとんど成り立たなくなっていること。YHO&HIROは97年から奥明日香の稲渕の棚田オーナー制度(※1)に参加しているのでわかるが、奥明日香の農家の跡継ぎさんたちは、定年までは勤めに出るのがいまや当たり前。土日、休日だけの兼業農家がほとんどなのだ。その貴重な休日を都会からやってくる棚田オーナーの世話にも当ててもらったりもしている。そんな背景もあって「明日香夢販売所」への出荷している野菜づくりは定年後の高齢者やお婆ちゃん、お嫁さんなどが担っているのである。
もうひとつ大切なことだと思うのは、世界中の食べ物があふれている一般スーパーでは、食べ物の旬というものが分からなくなってしまうこと。熱帯産のトロピカルフルーツや野菜も、原産地の熱帯暮らしでは汗をよくかくので、水分を補給してくれる地の食べ物があるのだと思う。日本も夏は熱帯化しつつあるのでそういうものも否定しないが、夏以外の四季折々にも体の健やかな営みを助けてくれる日本の旬の食べ物というものがある。その土地で暮らす体と切り離せないものが旬の食べ物であるとすれば、やっぱりそういうものを選んで食べたほうがいい。地産地消をコンセプトとする「明日香夢販売所」は、体がほしがる旬のものがど~んと置いてある。非常に頼もしい市場だといえる。
昔からよくいわれる言葉に、例えば「春には苦味を食べよ」というのがある。春には陽気によるのぼせを防ぐ食べ物をという意味と思われる。春明日香で借りている畑へ行って、まず探すのがふきのとうだ。ふきのとう味噌にして冷凍しておくと夏場のビールの友にも、これがあると何も要らないくらい。他にもウドやタラの芽がなど里山で採れた苦味のある山菜が夢販売所に山と並ぶ。明日香の畑に通うようになって、日本には昔からある旬の食べ物に目が向くようになった。夏には暑気を払うキュウリやスイカなど農家をお手本に自分でも作るようになっている。旬の食べ物を食生活の必需品として食べてきた。これって大事なことだとだと思う。一方いつでも欲しいものが手に入るスーパーは豊かそうに見えて、いったい体が何を必要としているか、かわからないくらい生活感覚を麻痺させてしまうシステムなのではあるまいか。
夢販売所へ行けば旬のものが実に廉価で買える。曲がったキュウリや、不揃いなピーマンなども小分けして生産者の名前がラベリングされたビニル袋に詰められていて100円以下のものも多い。フレッシュな野菜が安いということで、村内の主婦がわざわざバスに乗って買いものにくる人気ぶりだった。輸入野菜などでは農薬汚染などの心配が尽きないけれど、明日香ではその心配がないと思う。前述のように主婦や高齢者が担っている野菜畑は水田に向かない狭い段々畑が多く、自家消費分とプラスアルファーくらいの収穫しか望めないからである。普段食べているのと同じものを夢販売所にも出しておられるとみていい。こういう土地の市場こそが必要なんだとの思いを新たにしたのだった。
今回は旬のものを食べる普通の暮らしへの目覚めのようなことを書いてみたが、次回は地産地消についての考えを少し書いてみたい。
※1
棚田オーナー制度というのは、都会人向けに田んぼオーナーや畑オーナーを募り、地元農家のインストラクター付きで米や野菜を栽培し収穫物を持ち帰ることができる制度。農家の後継者難や高齢化が進む中で棚田の景観を維持するためのひとつの試みとして96年から始まった。明日香村は都市部と比較的近いのと、歴史遺産の発掘で常に話題に上る土地ということもあってオーナー制度の人気は高く、今では米や野菜だけでなく、竹の子や、みかんの木のオーナーなどにもどんどんオーナー制度が広がっている。



